「木造の家は寿命が短い」
そんな話を耳にしたことがある人は、多いと思います。
特に、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)と比べられるとき、
木造住宅は「だいたい30年くらいが寿命」といった話がよく出てきます。
でもこれ、本当なのでしょうか。
30年って聞くと、ちょっと短い印象を受けるかもしれません。
「せっかく家を建てるのに、たった30年しかもたないの?」と不安になる人もいるかもしれません。
でも、この「30年ルール」、実はかなりざっくりした目安にすぎない、という話でもあります。
今回は、そんな「木造住宅の寿命」にまつわるよくある疑問や誤解を、ひとつずつ紐解いてみたいと思います。
そもそも、「寿命が30年」とはどういう意味なのでしょうか。
これはよく「法定耐用年数」と呼ばれるもので、税法上の扱いとして定められた年数のことです。
たとえば、木造住宅の法定耐用年数は22年(※貸家の場合)とされており、
これをもとに減価償却をしたり、固定資産の計算をしたりします。
つまり、「税金上のルールとして30年弱」というだけで、
実際に建物が使えなくなるわけではありません。
人間で言うところの、「この年齢を超えたら引退」という制度があるだけで、
健康であればその後も元気に暮らせる、というのと似ています。
だから、「30年たったから壊れる」ということではないのです。
木造住宅でも、築50年、60年を超えてなお住み続けられている家は、全国にたくさんあります。
もちろん、定期的なメンテナンスがされていることが前提ですが、
「木だから弱い」というよりも、「どう扱うか」の方がずっと大事になります。
たとえば、雨漏りを放置していた家は、木造でもRC造でも傷みやすくなります。
逆に、こまめに点検して、必要なときに修繕している家は、
木造でも長くもつケースが多いです。
つまり、「素材の問題」というよりは、「管理と環境の問題」というわけです。
では、木造の家の寿命を実際に左右するものは何かというと、
だいたいこの3つに集約されます。
まず一つ目は、「施工の質」です。
いくら良い木材を使っていても、施工がずさんだったら、それはすぐに不具合が出ます。
逆に、適切に設計・施工された家は、ちゃんと長持ちします。
二つ目は、「立地と気候」です。
湿気の多いエリアや、日当たりが極端に悪い土地では、カビや腐朽菌のリスクが高まります。
これは木造にとってはちょっとつらい環境です。
ただし、最近はそうした気候に対応した通気工法や防蟻(ぼうぎ)対策なども進んできているので、
「昔ほどの弱点ではなくなってきている」とも言えます。
そして三つ目は、「住んでからのメンテナンス」です。
10年ごとに外壁塗装を見直すとか、シロアリ予防をしておくとか、
ちょっとした気配りで、寿命は大きく変わってきます。
これは人間と同じで、「ちゃんと定期検診を受けてるかどうか」と似ています。
ここで少し視点を変えてみましょう。
実際のところ、築30年〜40年の家でも、住もうと思えば住めます。
では、なぜ多くの人が建て替えやリフォームを考えるのでしょうか。
それは、寿命というより「ライフスタイルの変化」や「設備の老朽化」が大きな理由です。
たとえば、築35年の家でも、水回りを最新の設備に変えたらものすごく快適になります。
断熱性が上がって、光熱費が下がることもあります。
そういう「性能面での古さ」が、実質的な「住みにくさ」につながっているケースが多いです。
だから、「古くなったから壊さなきゃ」と考えるのではなく、
「今の暮らしに合っているか?」という視点で考える方が、実はずっと納得感が出ます。
ここまで聞くと、「なんだ、木造でもけっこうイケるじゃん」と思うかもしれません。
実際そのとおりで、木造は素材としても、いろんなメリットがあります。
たとえば、木は呼吸します。
湿気が多ければ吸って、乾燥すれば放出する。
だから、木造の家って、なんとなく空気が心地いいなと感じることも多いです。
さらに、コンクリートと違って、製造時に出るCO2が少ないという特徴もあります。
これは、地球環境的にも、なかなかいいポイントです。
「長く使える × 環境にやさしい」って、実はけっこう理想的な組み合わせです。
木造住宅は本当に寿命が短いのか…
答えとしては、「そうとは限らない」というのが現実です。
確かに、手入れをせずに放っておけば、30年でガタがくる家もあるでしょう。
でも、ちゃんと作って、ちゃんと住んで、ちゃんと手をかければ、
50年も60年も、むしろ“味わい”を重ねていける家になります。
結局のところ、「寿命」っていうのは、素材だけじゃなく、
設計・環境・メンテナンス、そして住む人の姿勢の“総合点”なんだと思います。
「木だからダメ」ではなく、「どう付き合うか」。
そういう視点で見直してみると、木造の家って、意外と頼もしい存在かもしれません。